電氣學會雜誌
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歐米電氣事業管見
安藏 彌輔
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1925 年 45 巻 448 号 p. 966-989

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抄録

著者は八ヶ月の行程で米國加奈陀歐洲を廻つて、歐米に於ける發電所送電線地中線等の設備に就て其の大勢を述べて居る。
普通の反動型水車では既に能率が高く、最早や進歩の餘地は少ないが、低落差高速度の所謂プロペラ型が歐米共に研究され、實際のもので容量或は大さで大きいものでは,加奈陀ラガベルの三萬馬力水車、瑞典リラエヂエツトの一萬馬力水車がある。米國ではネグラー、ムデイー型で、歐洲ではカプラン、ラバアチエツク其の他がある。水力火力共に發電所内送電系統は簡單で、高壓送電を爲す所では、發電機の母線を省略し發電機と變壓器とを一組としたのが多くある。米のトレントンチヤンネル、ハドソンアベニユー、加奈陀のラガベル、佛のジエネヴイユ、英のバーキン、獨のワルヘンゼーの如し。歐洲にマルチブレーキ型又は抵抗を具備した油開閉器があり、英國にはアイオングラッド型開閉器が廣くあるのは米國と異なり、トラツク型は歐米共に澤山使用されて居る。無番人發電所が米國では漸次其の數を増しつゝあるが、遠距離操禦式のものは少ない。發電所の變電装置は米國は一般に屋外式であるが、加奈陀及歐洲では一般に屋内式である。然し諾威の雨雪の甚だ多い西海岸のブエルボ、フオスのは唯一の屋外式だが別に不都合は無い。勿論此の差異は土地の天候にも因るが、歐洲では紙製の絶縁物が磁器製より早く發逹したのも理由の一つとなる。米國では既に二十二萬ヴオルト送電が實現し、十萬ヴオルト以上のものは數多あり、歐洲大陸でも少なく無い。獨逸の中部、バイニルン、バーデン、ラインランド地方に大きな送電網があり、瑞典のストクホルム市營及國有水力局も十萬ヴオルト以上を採用し、印度のボンベイにも三ヶ所ある。懸垂型碍子は歐洲ではセメントを使用しない型が多く、米國では普通はセメント附けしてパラフインの如きものを其の部分に塗り、蒸汽中での硬化が標準となつて居る。瑞典諾威は碍子の不良化は少なく、印度で最も多く、こゝではヒユーレツト型又はJ.D.型が喜ばれる。通信設備として高周波電話が漸次廣く用られ、歐洲では米國と異ひ、アンテナを架設せず、蓄電器を利用した形の小さなものが多い。
地中電纜の電壓は一般に米國より歐洲が高く、三萬ヴオルト級は永年使用し珍らしく無く、三心六萬ゲオルトのものさへある。
避雷器は高い電壓の送電には歐米共に省略したものが多く、十萬ヴオルト級に使用さるものは、米にアルミニユーム型オキサイド型か多く、オートバアルブ型ベツネツト型も時々見へるが、歐洲では抵抗及角型が多い。歐洲大陸でビーターゼン線輸が澤山使用され、又變壓器の保護に殆んど凡てに對しチヨークコイルが使用されて居る。
水力發電所の餘剩電力の利用として電氣汽罐で蒸汽を發生し、或は貯水池に揚水し渇水期の補充たらしむる實倒が少なく無い。電氣汽罐の大いのには二萬五千キロのものもあり、揚水ボンプのに二萬馬力のものさへある

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