抄録
先に東北大學に於て爲されたる特別短波長電波發生に關する實驗の繼續研究である。二個の三極眞空管を用ひ、特別短波長電波を得るホルボルン氏の接續に於ては、プレートとグリツド兩回路は主として靜電的に聯接せらる。之に電磁的聯接を加味すれば、(M.Mesny氏の方法)波長は幾分長くなるも、次第に強く且つ安定なる振動の得らるゝ事を述べてある。筆者は同じく二球を使用しプレートとグリツド間の電磁的聯接を適當にし、他の諸方法に比して優秀にして極めて安定且つ強勢なる數米程度の種々の短波長電波を發生せる事を擧げてある。並行線に依り比較的正確に波長測定の可能なりし事、實驗中電波の振幅、波長の變化を認めざりし事、從て波長は回路定數によつて決定せられ、管内の状態により左右されざる事を確めてある。次に恩師八木教授、ついで窪田氏同じ方法により、十米程度の二種の電波を發生し、安定なる可聽ビードを得られし事、筆者は波長4.4米の電波に就て實驗を試み同樣の結果を得、以て電波發生器の振動數殆ど變らず信頼し得べき程度にある事を述べてある。更に振動の強さが、線條電流、プレート及びグリツド電壓、並にグリツド回路に入る抵抗等に依り、如何に影響せらるゝやを實驗的に研究してある。終りにグリツド電壓を正負の方向に變へる時に起る振動の發生停止に、履歴現象のある事、且つ線條電流の小に過ぐる時には、時として振動發生に瞬時現象の伴ふ事を指摘してある。