抄録
第一章に於て本方式の説明をなした。即ち送信端に於て齒形廻轉圓板を用ひて脹動する光線を作り之を送るべき寫眞にあて之れより反射又は透過されたる光を光電池に導く。之れに濾波器を利用して寫眞の色調に應じて變調された搬送電流を發生させこれと周波數を異にする同期電流とを重疊して傳送する。同期電流は送信端に於て獨立の電源より瓢動せらるゝ直流電動機に直結せられたる同期電動機に作用して同期廻轉を完全に保持させる。受信端に於ては振動子型轉換装置を用ひて寫眞搬送電流によつて振動する光束の一部を衝立によつて遮斷することにより電流の大さを再び寫眞の色調にかへる。本方式は透過光線によりても又反射光射によりても電送出來る。第二章に於て研究の經過及び遞信省による本方式の東京大阪間の實地試驗に就て述べ更に昨年十一月初めより本方式が大阪毎日東京日々の專用線に實用せられ御大禮期間中の頗繁なる寫眞の送受より引き續き實用されて居る状態を述べた。第三章は本方式に關し行つた理論的考察及び實驗の結果を記述したもので脈動光束により發生する光電池電流の吟味をなし濾波器の必要なる事を指摘し又反射にて電送する場合の反射光線の分布を調べて鏡の設計に就て述べた。又電送の速度を如何に決定すべきかを示し次に同期方法に就て論じて理論並に實際上同期電流を重疊傳送する方法の便利なることを述べ各部分の電流のオツシログラフを示した。最後に本方式の轉換装置の特性を求めて此の装置が陰陽いづれの原書を送つて陰陽いづれに受ける場合でも理想的の電送を行ひ得る事を示し他の型の轄換装置に優れる事を示した。最後に透過、反射いづれによる電送が優れるかについては一方にのみに依る事の不合理を諭じて本方式の如く反射、透過いづれも用ひ得られ臨機選擇し得るのが最も良好なることを述べた。