電氣學會雜誌
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音響變成器及喇叭の双曲線攣數、集音器の實用理論及び音響傳達系の一般考察並に設計に就いて
小林 勝一郎
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1929 年 49 巻 489 号 p. 419-449

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抄録

(1) 音響傳達系統乃至電氣音響傳達系統の諸問題を、双曲線函數理論に從つて取扱ふために、先づ該系統の要素たる喇叭、並に音響變成器の兩端に於けるイメージ•イムビーダンス及びその張る双曲線角等のハイバーボリツク•バラメーターを求めその特性を論じた。其要點を學ぐれば
(a) 喇叭はエクスボーネンシャル及コニカル兩種のものに就き考へ、共に長さより定まる周期を以て衰減域と傳達域とを繰り返す傳達特性を有し、何れも衰減域より始まること、並にエクスボーネンシヤルホーンに於ては2K/mが、又コニカルホーンに於てはKγ1が1より大なるに從つて、衰減域の巾並に衰減の大さを縮少し傳達域の巾を擴張し、遂に常に衰減を消失しその兩端のイメージ•イムビーダンスは、その各端の面積を面績とする斷面一様なる管のサージ•イムビーダンスにtendすることを示し、特に外法寸法を同じくする特定寸法を有する二つの喇叭に於ける兩端のイメージ•イムビーダンス双曲線角並に衰減定數の周波數特性を圖示して、ハイバーボリツク•バラメーターに現はれた喇叭の周波數特性の觀念を確實ならしめ同時にそれを二つの喇叭についての比較に便ならしめてある。その結果エクスボーネンシヤル•ホーンに於て從來稱せられたカツト•オフ周波數はハイバーボリツク•バラメーターの上に別に時異性を現はさざること、並に從來稱せられなかつたコニカル•ホーンのカツトオフに就いては、エクスボーネンシヤルホーンと同じ程度に考慮されねばならぬことが述べてある。
次にハイバーボリツク•バラメーターを用ひた喇叭の問題の解決の一例として、比較的一般の場合たる、喇叭を自由なる空間に置き、喉を喉に於て十分高き周波數に於て有つベきイメージ•イムビーダンスに等しき内部イムビーダンスを有ずる振源にて刺戟する時を考へ前例の特定の喇叭に於のる出力の周波數特性を算出し、之を圖に示してある。
(b) 音響變成器に就ては、一般の場合に於けるハイバーボリツク•バラメーターの特性を論じ,特に振動板が,普通の如く單一共振系と考へられる時には、兩端に就て變成比を有する帶域濾波器と考へられることを示し,ハイバーボリツクバラメータースの周波數特性並設計の順序を示してある。
(2) 次に音響傳達系統の諸問題に常に着き纒ふ集音器に關して數個の假定より出發して、その實用理論を導き、それを實驗に依つて確めんと試みてある。ここに集音器とは、一面を音響場に曝す或る表面の謂であつて、これが音響場のために、如何なる力を受け如何なる速度を有するかといふ問題であるが、結極集音器はそれが外方に向つて有する音響イムビーダンスZ2を内部イムビーダンスとし、集音器に依つてdistnrbされざる元の音響場の集音器を置かるべき位置に於ける力F0とF0(1+Z2/α2ρν)…(105)式…なる關係にある力を内部起振力に有する、一つの振源を以て代表せらることを示し、その上の力及び速度を論ずる時は、集音器の圓方に向つて有する系統に、この振源が直接に聯結されたものと考へてよろしいことを述べ、實際上往々現はれる集音器のZ2を測定して、理想的場合に計算されたるRayleigk郷の(107)式と比較し、相當の大さのフランジある時は正しく然らざる時も近似的に一致することを確め、次にZ2に關係する集音器の内部起振力及内部イムビーダンスに就き實驗的に確めてある。
(3) 次に代表的なる音響傳達系統に就いて考へ、特に、喇叭(その口を集音器と考ふ)の寸法が波長に比して充分長き場合には、全系統の一つの端例へば音響變成器の一次に關して、極めて簡單なる系統に歸して考へ得ることを示し、この應用の一例として、最大出力の問題を取扱つてある。
(4) 次に、音響傳達並に電氣音響傳達系統の設計を考へ、この時何れにしても音響變成の設計を元とするを便利とすること、その手續を示し、特に廣き傳達域を要求される場合には、音響變成器の一次に於いて、それが隣接せる系統との間に、或る彈性要素を夾むことは二重の利あることを述べてある。尚結局かゝる傳達系統は、音響變成器の特性で定り、後者は主として振動板定數で定るので、振動板が重要なる役割を演ずること及これに對して研究されねばならぬ諸要點を擧げてある。

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