抄録
同調波の一部を電源とせる放電に於て,或る一つの半サイクルに於ける放電に伴ふて發生せる電荷の,次の半サイクルに於ける火花短絡に及ぼす影響を,各半サイクルに於ける放電の進行の程度をParameterとして吟味し,刷子放電の状態に於ては,その影響極めて少きも,局部火花放電の發生し得べき程度の電壓になると,その影響が顯著となる事を認めて居る。
而して,筆者の實驗結果と不減幅高周波電源による他の著者等の結果とを比較吟味し,後者の場合に於ける火花短絡の機構を鮮明ならしむるには,各半サイクルの放電により電界に發生せる電荷の電界の模樣を亂す程度と,その電荷の作用の消失する迄に要する時間との間の關係を判然せしむる事が必要なる事を推論して居る。
猶,電荷の比較的多量に存在する電界に於ける負火花放電に對し,特長ある圖形,即ち電荷の多量に存在せる電界に於ける放電にありては,火花放電を達成せしむべき電子は必ずしも負針電極附近より供給されるもののみではなからうと云ふ考察を支持し得るやうな一つの實驗結果を示して居る。