電氣學會雜誌
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鰮油•琥珀•アスファルト系絶縁塗料
稻井 猛
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1939 年 59 巻 616 号 p. 606-612

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抄録
琥珀は耐久性に富み,電氣絶縁材料として古くより重用せられてゐる。岩手縣に多量發掘されつゝある琥珀を絶縁塗料に活用する目的にて之を加工し,更に鰮油竝にアスファルトを配合し,トルオール溶劑にて塗裝燒付して,その物理化學的諸性能を吟味した。即ち150°,1hの燒付試料に於ては,鯉油:琥珀:アスファルト=3:2:5の,合率が最良である。次にこの最良組成に於ける燒付條件を吟味した處,200°,50min.にて最も優秀なる特性が發揮せられる事を認めた。
斯くして決定した最良組成,最適燒付條件に從つた塗膜の耐熱性能を比較檢討する目的にて,之を更に1h加熱して,次の如く劣化の甚だしくなる温度を明らかにした。即ち絶縁性は290°の加熱にて全く消失し,硬度は300°より低下した。可撓性に198°にて不良となる。HNO3(比重1.38)に對しては130°以上の加熱にて特に腐蝕を受け易くなり,HCl(10N)には133°,NaOH(10N)には236°以下にて抵抗性大であつた。200°の變壓器油浸漬にては290°にて劣化甚だしく,沸騰水には289°,トルオール(20°)には292°以下にて變化はない。熱天秤によれば約250°より徐々に重量の減少を認め,400°に於て重量の減少率が極大となる。尚金屬顯微鏡にて塗膜表面殊に藥品による腐蝕状況を詳細に吟味してゐる。
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