電気学会誌
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Siegen大学における教育および研究
Mustafa Kizilcay
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2004 年 124 巻 11 号 p. 727-731

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抄録

本記事ではドイツの大学特にSiegen大学における教育および研究について概説する。ドイツにおける教育•研究の自由は憲法により約束されている。その結果,広い範囲における大学の自治が保証され,変化に富み,魅力的な大学環境が学生,教職員および研究者に与えられている。また,国際競争の激化や他大学•機関との協力•連携により国際化も進んでいる。特に,英•米の大学システムの基本となっている学士号,修士号を付与できる新制度の導入により,教育そのものの国際化が進められている。
ドイツの大学の大半は州政府の経費に支えられた公立大学であり,学生は学部教育に対して学費を支払う必要はない。ただし,一定期間以上の在学および修士,博士課程に対しては各州が定めた学費が必要となる。2002年度のドイツの大学を含む高等教育機関在学生の総数は約190万人,新入生は299,042名である。このうち,女性が150,444名,外国人49,084名となっている。分野別では社学科学系(法,商)約10万名,言語•文化6万名,理学系,工学系が各54,000名,医学系9,000名,その他2万名となっている。
ドイツの大学制度の基本原則は中央政府が定めるが,運営を含めその他の学則等は州政府に委ねられている。大学およびこれと同等の教育機関(institutions)は博士号,場合によっては教授資格授与の権限を与えられている。Fachhochschule(直訳すれば科学大学)は博士課程指導の権限がない。現在,ドイツには360の高等教育機関(大学など)があるが,そのうち90が大学,190がFachhochschuleである。190万人の学生のうち,140万人が大学および同等の教育機関に属している。これらの大学生の大半はDiploma(学士号相当)資格,Magister資格などを目指している。従来のドイツの大学制度では4学期(2年間)の基礎教育および13週の学外学習の後,試験に合格すると3学期の専門教育および13週の企業実習を経てDiploma1(D1:応用主体/必要単位数210)の資格(Dipl-Ing.)が可能となる。D1の後,更に2学期の専門課程を履習するとDiploma2(D2:理論主体/必要単位数270)の資格(Dipl.-Ing.あるいはM.Sc.)が可能となる。これらの履習に加え,D1では4か月,D2では6か月での卒業研究とDiploma論文の提出が必要である。一方,1998年にイギリスと同一の新しい大学制度が設置されBachelor(学士),Mas-ter(修士)学位を取得する課程が導入された。この制度では,6学期(3年間)で学士号,さらに4学期,合計5年間で修士号の取得が可能である。従来の制度では最低4年間でDiploma1(学士相当),さらに2年間,合計6年間でDiploma2(修士相当)となり(我が国と同一),当初からMSc.取得を目指す学生にとっては新制度が有利である。博士課程はD2あるいはM.Sc.取得後となる。
Siegen大学は北ラインWestphalia州にあった大学,科学大学,教員養成学校等を統合して1972年に設立されたが,その起源は1594年設立のUniversa Schola Nassovica Sigenesisにある。理学部,教育学部,経済学部,芸術•音楽学部等を含む12の学部(department)からなり,工学系の学部としては電気工学•計算機科学,機械工学,civil engineeringなどがある。学生総数12,200名のうち1,000名が電気工学•計算機科学に属する。教員数276,scientific staff 310名,職員数538,外部機関からの補助金による研究者240名で構成されており,年間予算は95Mio Euro程度である。教員採用は公募により,当該大学からの採用は禁止されている。教員は州政府の公務員となる。博士課程学生は州政府あるいは企業からの資金により3~5年間,scientific staffとして大学に雇用され,実験課目の指導,あるいは一部の授業を担当する。大学予算による研究費は不十分なため,政府機関•財団•企業などからの研究費の獲得が必須である。

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