抄録
スコットランドで街路灯を高圧ナトリウムランプから青色の高輝度放電ランプに変えたところ犯罪数が減少した．日本でも同様の試みで犯罪数の顕著な減少が報告されたが，青色照明の防犯効果の機構については，心理的な仕組みが報道されているだけで，視作業に関する青色照明の優位性は示唆されていない．今回，青色照明の防犯効果の機構について調べるために，防犯上重要な人の顔の認識を青色照明下と白色照明下とで比較した．実験は周囲から漏れ光のない小径で行った．電柱の照明器具1灯に青色蛍光ランプと白色蛍光ランプとを交互に取り付けた．条件統制の必要上，予め撮影した顔写真を評価対象とし，被験者から20m隔てた地上1.5mの位置に提示した．28名の被験者のそれぞれは，提示された顔が認識できるまで一定速度でゆっくりと近づき，顔を正しく認識できた時の距離を測定した．実験の結果，青色照明下での顔の認識距離は，白色照明下のそれより短いことがわかり，夜間街路における顔の認識について青色照明の利点は見出せなかった．
