抄録
文字の視認性評価において、背景輝度や視対象サイズなどの文字属性による視認性評価方法は確立されているが、呈示位置を考慮した読みやすさについては定量的に検討されていない。本研究では、広範囲にわたり文字の呈示位置を変化させ主観評価実験を行うことにより、呈示位置が読みやすさに与える影響を定量的に検討し、その加齢変化についても考察した。暗室内で大型プラズマディスプレイを用いて、呈示刺激(コントラスト1、文字フォントMSゴシック12Pの数字(時計表示))を刺激とし、縦方向(上:0~17[°]、下:0~45[°])、横方向(左0~45[°]、右0~22[°])の範囲内で呈示した。被験者(男性3名、平均年齢23才)はその視認性を6段階で主観評価をした。また、若齢者、高齢者についても同様な実験を行った。結果から、高さ(下)0~17[°]の正面に呈示されると最も読みやすく、左右に対しては対称的な結果が得られた。最も読みやすい高さにおいて、横方向に40[°]以上離れると、読みにくさを感じるまで評価が下がる傾向が示された。若齢者、高齢者の結果を比較すると、若年者は正面に近づくに従い視認性が連続的に向上するが、高齢者はある地点から評価が上がらなくなる傾向が示された。以上より、呈示位置により文字の視認性は異なることを示され、その特性を定式化した。また、この特性が若年者と高齢者で定量的に異なることを示した。