抄録
 安全な生活空間の提案には、日常生活にみられる複雑な輝度分布視野での順応輝度の把握が重要である。しかし、順応輝度を把握する為に必要な眼球内の散乱光量は、年齢差や個人差が大きい。本稿では、高齢者2人で高輝度面を呈示した視野で輝度差弁別閾値の測定を実施し、既報の若齢者10名の実験結果と比較した。
 実験は輝度差弁別閾値の測定で、高齢被験者は両眼視で呈示視標が視認閾となるように視標の輝度を調節する。直径10°の均一輝度の背景の輝度、円形視標の大きさ、高輝度面の位置を種々に設定して実施した。
 輝度差弁別閾値と順応輝度増加量に対して、年齢と視力の関係を考察した。個人差はあるものの年齢が上がると輝度差弁別閾値と順応輝度増加量は大きくなるが、視力との間には関係性が認められない。実効率に対して年齢との関係を考察したが、実効率は若齢者と高齢者に違いはみられていない。
 今後は、高齢者の輝度差弁別閾値や順応輝度増加量に関して、定量的把握を行っていく。