全人的医療
Online ISSN : 2434-687X
Print ISSN : 1341-7150
症例報告
身体因性偽神経症と考えられた下肢痛の1例
全人的医療の視点から
高橋 和矢永田 勝太郎稲見 卓也島田 雅司
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2014 年 13 巻 1 号 p. 72-80

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抄録

[目的]身体因性偽神経症(pseudoneurosis, Frankl, VE)1)とは,身体的病態(機能的病態または器質的病態)が見落とされ,短絡的に心因性(うつ病または神経症)を疑ってしまうことを言う.今回,橋本病の不十分な治療に下肢動脈硬化の加わった症例をうつ病と誤診され,前医の投薬によりADL,QOLが著しく低下した症例を経験したので報告したい.[症例]75歳女性,主訴は下肢全体の痛み.前医によりうつ病と診断され抗うつ薬,抗てんかん薬を処方される.だるさ,物が二重に見えるなどの症状により日常生活が困難になり当院受診.橋本病に対しての治療と併せて,理学療法(鍼灸),心理療法(実存分析)を統合的に用いた.[経過]甲状腺機能の正常化を図り,ホメオスタシスを是正し,血行動態を改善させた結果,10年間続いた下肢痛の改善が観られた.また,運動療法を通じた自助努力が疼痛緩和に有用であることを患者自身が実感でき,症状のセルフコントロールへと向かった.血行動態の変遷と症状の変動は相関を示した(特に総末梢血管抵抗値).[考察]身体因性偽神経症では,向精神薬での症状改善は望めず副作用ばかりが現れてしまう.その結果,患者の訴えはさらに多岐に亘るようになり,病態理解が一層困難になる.医学的な正しい診断と,身体・心理・社会・実存的,すなわち全人的な患者理解を治療に反映させることが重要であると考えられた.

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© 2014 公益財団法人 国際全人医療研究所
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