全人的医療
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Print ISSN : 1341-7150
症例報告
心因性疼痛に対して身体的アプローチおよび実存的アプローチが有効であった1症例
青山 幸生広門 靖正包 隆穂永田 勝太郎
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2014 年 13 巻 1 号 p. 81-87

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抄録

[症例]67歳,女性.主訴:右大腿内側後部から下肢へ広がる痛み.既往歴:高脂血症.現病歴:X-9年よりうつ病,X-6年より,双極性感情障害にて治療中.X-5年,右大腿内側後部から下肢へ広がる痛みが出現.痛みは,睡眠中以外一日中続いた.X年2月,通院中の精神科から身体表現性疼痛障害の診断のもと,紹介受診となった.[初診時現象]身長154㎝,体重67㎏(BMI 30:肥満).血圧:106/70mmHg,心拍数:78/分,整.シェロングの起立試験で血行動態不良症候群(高反応型)を認めた.神経学的異常所見なし.臨床検査所見異常なし.画像所見:MRIで,胸腰部脊柱管狭窄症を認めた.東洋医学的所見:胸脇苦満,瘀血.心理社会実存的背景:夫と二人暮らし.夫からのストレスが大きく,QOLの低下,生き甲斐の喪失などが認められた.処方:精神科より,ゾルピデム酒石酸塩10mg/日,トラゾドン塩酸塩50mg/日,クアゼパム30mg/日,ミルタザピン30mg/日,レボメプロマジン25mg/日,ラモトリギン200mg/日など睡眠薬,抗うつ薬,抗精神病薬,抗てんかん薬が処方されていた.[治療経過]まず,痛いところを触診し,直接手で触って(手当て)痛みの評価をした.5年間で,初めて痛いところを直接診察してもらったとのことであった.その部位に,局所麻酔薬を用いたトリガーポイント注射,仙骨部硬膜外ブロック,キセノン光による光線療法等を施行し,鍼治療も併用した.身体的アプローチにて良好な医師―患者関係を築くことができ,向精神薬の減量も行うことができた.さらに,実存的アプローチ(反省除去)を施行することにより,人生の意味について気づきを得ることができ,血行動態の改善と共に痛みはコントロール可能となった.[考察]痛みは,長年の精神疾患に起因する心因性と血行動態不良症候群に由来するものと考えられた.リラクセーションの導入,向精神薬の減量による血行動態の改善と,実存的アプローチによる実存的虚無感からの脱却が良好な痛みのコントロールへ繋がったものと考えられた.さらに,疼痛の治療に言えることは,信頼に裏打ちされた医師―患者関係の構築がまずは優先され,それがないところに医療は成り立たない.このことは,慢性疼痛治療の特異性でもある.今回の身体的アプローチは,まさにそのステップに有効に働いたものと思われた.

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© 2014 公益財団法人 国際全人医療研究所
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