2016 年 15 巻 1 号 p. 66-71
上下顎の痛みと痺れを主訴として来院した41歳の女性に対し,全人的医療を行った.既往歴は41歳より不安障害と過敏性腸症候群で投薬治療.現病歴として下顎左側智歯の抜歯を行った後,上下顎の複数箇所の痛みと左右頬部および両側の肘から指先にかけての痺れ感が認められた.鍼治療や漢方治療を行ったが効果はなく,抜歯から1ヶ月後に当科を受診し,プレガバリン25mg/日とメコバラミン1500μg/日の処方に加え,キセノン光照射治療が行われた.また,ロゴセラピーを応用した精神療法を用いて患者の訴えを共感的に傾聴することに努めたところ,心配事があると痛みが増してくる気がすると自身で分析するようになった.症状は一進一退であったが,初診から7ヶ月後にはNumerical Rating Scale(以下NRS)で2/10となった.心理的要因が強いと考えられる痛みを訴える患者に対し,薬物療法やキセノン光照射治療に加え,受容的な態度で話を傾聴したことで症状に改善がみられたと考えられる.