全人的医療
Online ISSN : 2434-687X
Print ISSN : 1341-7150
総説
糖化ストレスと炎症・疼痛
米井 嘉一
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2021 年 19 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

炎症・疼痛は,免疫ストレスが身体に作用した結果として生じる.ごく初期の段階では微小炎症として存在し,これは免疫ストレスとして動脈硬化など老化関連疾患の危険因子となる.免疫反応には酸化ストレス,糖化ストレスが影響を及ぼす.糖化ストレスによる非生理的な蛋白翻訳後修飾には次の二つの経路がある.第一は,還元糖・脂質・アルコールに由来する中間体アルデヒドが蛋白糖化最終生成物(advanced glycation end products:AGEs)を生成,さらにAGEsがマクロファージ表面のRAGE(receptor for AGEs)に結合し,炎症性サイトカイン産生が亢進する経路.第二は,ミトコンドリアのTCAサイクル障害を惹起し,フマル酸によるシステイン残基のサクシニル化によりS-(2-succinyl)cysteine(2SC)を生成する経路である.その結果,炎症・疼痛は増悪し,糖化ストレスがさらに強まるという「悪性サイクル」が存在する.現代はまさに「糖化ストレスと闘う時代」である.今後は,糖化ストレスについて理解を深め,適切な対応法を確立し,実践していくことが重要である.

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