2021 年 19 巻 1 号 p. 40-49
筋痛性脳症/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは,原因不明の慢性で深刻な疲労や広汎な痛み,睡眠障害などの多彩な症状を呈する疾患である.今回,自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)が併存する神経発達症群に合併したME/CFSの1例を報告する.
【症例】14歳,男性,神経発達症群,感冒を契機に多彩な身体症状を呈し,ME/CFSと診断された.低血糖とグルコース・スパイクが認められた.治療は補剤の投与と食事指導を行った.実存的資源であるマリンバ演奏を支持した.発症後5ヶ月での学習環境の調整を機に症状は改善しME/CFSの診断基準から外れた.低血糖とグルコース・スパイクの頻度は軽減した.【考察】神経発達症群に合併したME/CFSの1例に対して,社会的ストレス軽減のため学習環境を調整することと周囲の理解を得ることが最も治療効果があった.その上で衝動性に関与する可能性のある低血糖やグルコース・スパイクを改善するための食事指導が成り立つと考えられた.