全人的医療
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総説
血糖変動と精神症状に関する国内外の研究の動向
大平 哲也陣内 瑶青山 尚樹溝口 徹
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2022 年 20 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

心理社会的ストレスは糖尿病発症の要因になるが,その一方で,糖尿病が持続することによりうつ症状が出現することや,急激な血糖変動が不安,イライラ等の精神症状を引き起こす場合がある.そこで本稿では,これまで国内外で報告されている血糖値の変動と精神症状との関連についての論文を概説し課題を抽出した.糖尿病が精神症状の要因になることに加え,低血糖が精神症状を引き起こす可能性が示唆されている.一方,精神ストレスが低血糖を引き起こす可能性があり,低血糖と精神症状とは相互に関連している可能性がある.5時間糖負荷試験の結果では,低血糖及び低血糖症状は健常人においても比較的高い頻度で起こる可能性があるが,低血糖のみでは症状が説明できない場合もあり,血糖値の変動幅の大きさ,インスリン分泌,自律神経機能の変化が症状に関連している可能性がある.持続血糖モニタリングは実生活での血糖変動と精神症状との関連を検討するために有用であるが,5時間糖負荷試験及び持続血糖モニタリングともに精神症状との関連をみた報告は未だ少なく,エビデンスを構築するために,今後これらの関連を多数例で検討する必要がある.

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© 2022 公益財団法人 国際全人医療研究所
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