2022 年 20 巻 1 号 p. 31-43
元来,運動器理学療法の理学療法士(PT)は運動器の障害に対し,生物医学的モデルによりその機能の回復をはかる.しかし,一般整形外科開業医療において機能性身体症候群(FSS)の患者が存在する.FSSは単一の専門分野による治療は困難なため,複数の分野(multiple disciplinarity)によるアプローチの導入が必要である.私たちはそのなかで,専門横断的アプローチである身体・心理・社会・実存的医療モデル(BPS-Eモデル)を当院における臨床体系として導入した.このチームの一員であるPTは,専門分野の境界を越え,全人的な医療を実現することを目指す.このことはPTにとって非常に困難な挑戦であるが,PTに対してFSSの治療,予防医学および患者の相対的健康の獲得という新たな目的が付加されることとなり,運動器理学療法の可能性を拡げるものと考えられる.