2023 年 21 巻 1 号 p. 110-117
かつてヒポクラテスが「汝の食事を薬とせよ,汝の薬を食事とせよ」と遺したように,食は「全人的健康の根幹をなすもの」である.豊かな食材に恵まれているかにみえる現代だが,手ずから食を整える文化の衰退は著しい.加えて,食を介した豊かな人間関係を育む機会や力も急速に失われる傾向にある.近年,保育園や幼稚園,義務教育学校,高等学校など福祉や教育の現場では,著しい偏食や過度の食欲増進,あるいは拒食傾向など食行動上の課題が散見される.とりわけ,「おいしいという感覚への指向」が感じられない乳幼児や児童生徒が増えている.これらの食行動や食習慣に見られる「食のゆがみ」は,「生きざまのゆがみ」に通ずるものである.栄養士および管理栄養士(以下,栄養士と総称)は,これらの生きざまのゆがみによる機能的病態の改善に貢献する役割を担っている.また,人は,最期まで自らの口で食べたいという願いをもっており,致死的病態においても栄養士の役割は大きい.本稿では,栄養士および調理師養成の現場からみた,これからの栄養士への期待について述べる.