2023 年 21 巻 1 号 p. 81-90
【目的】我々の先行研究において,鍼灸臨床実習を経験した鍼灸専門学校の学生は,臨床指導教員による臨床場面を観察し,そこで展開されるコミュニケーション技術,治療者―患者関係の構築技術,鍼灸治療の技術にふれ,鍼灸師としての自覚や職業意識を高めていた.このような実習機会はすなわち,Bloom BSにより指摘された3つの領域(知識・技術・態度)を含み,ことに態度教育の育成に貢献したと考えられた.鍼灸臨床実習における学びのプロセスに関する研究はない.今回,その学びのプロセスについて分析,検討した結果を報告する.【対象と方法】鍼灸専門学校生を対象に行い(3年課程3年生42名,男性21名,女性21名,年齢平均31.8 ± 6.9歳(mean ± SD)),実習期間中に2回,自由記述を課し収集した71名分のデータを,因子探索型質的研究の分析手法により,全人的医療の3ステップ(第1ステップ:速やかな苦痛からの解放,第2ステップ:全人的に苦痛発現の意味を探る,第3ステップ:セルフ・コントロールによる疾病の予防と健康創成のための方策)の視点から解析した.【結果】全人的医療の3ステップは,「その他」を含め,8つのカテゴリと,22のサブカテゴリに分類され,195のコードが抽出された.8つのカテゴリの内訳は,第1ステップは,【Ⅰ.マナーを身に付ける必要性を自覚する】,【Ⅱ.患者と対面し医療面接に戸惑う】,【Ⅲ.患者が自己の経過を語る】,【Ⅳ.カンセリング・マインド】の4カテゴリから成り,第2ステップは,【Ⅴ.患者のこころと身体からアプローチする】,第3ステップは,【Ⅵ.患者自身がセルフ・コントロールできる】,その他は,【Ⅶ.アイデンティティの形成】,【Ⅷ.技術を磨く】の2カテゴリである.【考察】全人的医療の3ステップは,患者が痛みから解放され回復していくステップである.学生は,全人的医療を体験し,知識・技術・態度を総合的に学びアイデンティティを形成していることが解った.さらに実践の学習効果として学びのプロセスのカテゴリが見いだされ,今後の実習指導の指標と評価となると考えられる.【結語】臨床実習において,学生は医療面接やカウンセリング・マインドの重要性,患者のこころと身体からアプローチをすること,患者自身がセルフ・コントロールしていることを学んでいた.そして技術を研鑽し,鍼灸師としてのアイデンティティを形成していた.