2004 年 33 巻 3 号 p. 393-399
情報のディジタル化とブロードバンドネットワークの普及は,音楽著作物などの価値ある情報(コンテンツ)の不正コピー問題を顕在化し,コンテンツの提供者,利用者,仲介者,技術提供者などを巻き込んだ複雑な議論を起こしている.利用者は,容易なコピー手段とネットワーク環境を所有することで,より自由なコンテンツの流通が可能になると考えたが,その一方,提供者や仲介者は,自らの権利を保護するために,コンテンツのコピーや視聴を制限する技術を採用するとともに,法的手段を用いてコンテンツの不正利用抑止を強化する動きを見せている.ここでは,コンテンツの不正利用に関する現状をまとめるとともに,コンテンツ保護技術,および経済・社会的な不正利用抑止方法について紹介する.最後に,緩やかな権利保護に基づいてコンテンツ流通を促進させようという新しい動向について述べる.