抄録
本研究では,土器復元作業における考古学者の負担を軽減するために,計算機上で土器を自動的に復元する土器復元システムの開発を行っている.既存のシステムでは,破片画像から土器破片の輪郭線を抽出し,その輪郭形状を比較することにより接合判別を行っていた.しかしながら,遺跡発掘現場から出土した土器破片は欠損や風化などの影響を受けることが多く,破片の輪郭形状を比較するだけでは正確に復元できない土器も依然多く存在する.そこで本稿では,考古学者が復元の手がかりに用いる,土器の着色や表面模様などの色彩情報を考慮に入れた接合判別手法を提案する.まず,破片画像から色彩と形状の特徴をそれぞれ抽出する方法について述べ,与えられた破片画像に対して二つの特徴が持つ接合判別に対する有効性に基づいた重み付き類似度の評価手法を提案する.そして,重み付き類似度を用いることにより色彩と輪郭形状の双方を効果的に利用した接合判別手法を提案する.最後に,それらを実装した土器復元システムを実現し,遺跡発掘現場から出土した土器破片を用いた実験により,本手法の有効性を評価する.