2008 年 37 巻 5 号 p. 671-677
本稿では,映像・音響のビットレートが臨場感に与える影響の解析を行い,ビットレートから臨場感の推定を試みた.その方法として,まず,マルチメディア素材に対しSD法による主観評価実験を行い,素材に対する印象を多次元評価し,結果を因子分析することで,評価空間の圧縮を行った.その結果,三つの因子が得られた.また,臨場感を,主観評価実験によって同時に評価し,その結果と因子分析の結果とを用いて重回帰分析を行った結果.臨場感の評価値は三つの因子得点から精度よく推定できることが明らかとなった.更に,映像・音響のビットレートと三つの因子得点との関係性を調査したところ,二つの因子に関係性が見られ,二つの因子得点はビットレートからある程度推定できることがわかった.この結果から,映像・音響のビットレートは,因子1と因子2の得点に影響を与えていることが明らかとなり,この因子得点を利用することで,臨場感をビットレートからある程度推定可能であることが確認できた.