画像電子学会誌
Online ISSN : 1348-0316
Print ISSN : 0285-9831
ISSN-L : 0285-9831
論文
多次元直交空間の回転・置換群を用いた直線位相LOTの設計手法
井澤 裕司
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 39 巻 1 号 p. 23-35

詳細
抄録

本研究は,画像や音声の符号化に用いられるLOT (Lapped Orthogonal Transform) の設計手法に関するものである.このLOTは直交変換の基底長を隣接するブロックにまたがるように拡張したものであり,一般には直交性と直線位相,完全再構成の条件を満たすフィルタバンクとして設計される.このフィルタバンクについては,完備な構成法が数多く提案されているが,そのほとんどが核となる直交変換部とこれに従属接続するラティス 構造の変換処理部から構成されており,それらの設計パラメータの数を削減する手法が検討されている.一方,Nが偶数のとき (N × 2N) の行列で表されるすべてのLOT基底は,2N次元空間の互いに 直交するN個の単位ベクトルの回転と置換の操作により生成することができる.本稿では,これらの回転・置換の操作が,それぞれ連続回転群と有限な対称群を構成することを明らかにし,群の性質を用いて,多次元の直線位相LOTを効率的に設計する手法を提案する.すなわち,直交座標系の回転角をパラメータとした直観的で対称性のある幾何学モデルを導入することにより,基底のすべての状態が表現可能な最小限のパラメータ群を規定することができる.更に4~8次元のLOTについて,符号化ゲインが最大となるパラメータを求め,従来手法に比べ 設計パラメータの数が低減されることを示す.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 画像電子学会
前の記事 次の記事
feedback
Top