2011 年 40 巻 5 号 p. 823-832
パーティクルフィルタは多数の粒子を用いた予測に基づく手法であり,ロバストな物体追跡アルゴリズムとして様々な応用がなされている.しかし,一つの状態遷移モデルを用いて粒子の次状態を決めているため,不規則に運動する物体に対しては追跡精度が損なわれるという問題があった.そこで本稿では,不規則運動物体の追跡を対象として,二つの状態遷移モデルを用いた2重モデルに基づくパーティクルフィルタを提案する.本提案では,性質の異なる二つの状態遷移モデルを同時に用いることにより,物体の急な方向転換などに対して安定した追跡を可能にしている.本アルゴリズムをソフトウェア実装し,ボールが壁や床でバウンドするような不規則運動が発生するシーンに適用した結果,従来手法と比較して高精度な追跡が可能なことを確認した.