抄録
本稿ではエジプト・ルクソール王家の谷・西谷にあるアメンヘテプIII世王の墳墓内に描かれた壁画の保存を目的としたデジタル化手法について述べる.デジタル1眼レフカメラを搭載したパノラマ写真自動撮影装置を墳墓内で移動させて,壁面あたり1000枚〜2000枚の写真を撮影した.これらを市販のスティッチングソフトウェアと独自に作成したソフトウェアを用いることにより接合し,壁面全体のデジタル画像を作成した.デジタル壁画の精度は,「研究者が現地にいなくとも画像を利用して研究を行なえる」という要求を十分満たしており,かつ,比較的入手しやすい機材を用いたため,デジタル化のコストを抑えることができた.