本論文では,非因果的内挿予測と直交変換とのハイブリッド符号化を用いたマルチエンコード選択型の符号化方式を提案する.提案方式は,直交変換と量子化順序の組合せにより11種類のモードを設定し,ブロックごとに符号化誤差電力が最小となるモードを選択する.実験により,実現したい所要符号量によって直交変換の優劣が変動することを確認し,複数のモードから選択的に符号化を行うことの有効性を示した.その上で,従来ハイブリッド符号化方式において用いられてきたゾーナルサンプリングを,空間領域でのサブサンプリング処理にまで拡張できることを示し,所要符号量の制御に有効であることを示した.さらに,H.264 (High Complexity Mode) に比べて,提案方式はPSNRで最大約6 dB 程度の画質改善があることを確認した.特に,提案方式では,精細部分での画質の改善があること,高ビットレートにおいて特性改善が顕著であることが示された.