2018 年 47 巻 2 号 p. 167-174
本論文では,道路上の白線検出の精度を上げるために,車載動画におけるワイパー領域修復法を提案する.ここでいうワイパー領域修復とは,ワイパー領域を抽出し,抽出した領域を背景として補完することである.従来のワイパー領域修復法は,ワイパー画素の抽出と,ワイパー画素の補間という2 つの処理とから構成される.前者では,輝度値とフレーム間差分を用いてワイパー画素を抽出していたが,その精度は十分ではなく,ワイパーの誤抽出や抽出漏れが生じていた.また,後者では,直前の入力フレームを使用して補完していたため,2フレーム連続したワイパー領域ではワイパー画素の補完ができないという問題があった.そこで本論文では,抽出したワイパー画素からワイパー角度を推定し,この角度に基づいてワイパー領域を覆うマスク処理を行うことにより誤抽出と抽出漏れを減少させる方法を提案する.この提案では,修復された直前のフレームを利用してマスク領域を補完することにより,2 フレーム連続したワイパー領域を補完できるようになる.従来法と提案法とで白線検出の正検出総数ならびに正検出率を比較することによって,提案法の有効性を示す.