抄録
筆者は勤務校において2020年度後期の科目「文学」を担当し、中国古典を教材とする授業をおこなった。履修者が古典世界と現代社会とのあいだに〈変化・差異・断絶〉ではなく〈不変・共通・連続〉をみることをうながす意図をもって教材を選択した。そして、その効果について、選択履修者の学修成果、すなわち提出された鑑賞文によって検証した。とくに、後漢の王充『論衡』論死篇・訂鬼篇に対する履修者の反応をくわしく分析したが、その結果、履修者の受けとめはさまざまな方向に拡散していた。それは履修者が、時代性を有する古典としてではなく、現代性を有する古典として教材文を読んだことをしめすものであり、上記意図での教材選択は、一定程度に奏功したといいうる。