2021 年 2021 巻 32 号 p. 15-27
仮説実験授業は,授業を評価する基準を「たのしさ」においている。しかし,仮説実験授業の提唱当初は,板倉自身も「授業におけるたのしさ」という用語・概念を使用していなかった。板倉は,はじめから「主体的人間,いわば自らの頭で考える人間を育成することをめざす授業」を仮説実験授業の目的においていた。その目的を,よりわかりやすく表現する用語として「たのしい授業」という概念・用語を使用するようになった。それに対して,現代の「科学教育」研究はいわば「わかる授業」をめざすものであり,仮説実験授業とは目指す方向が違う。それはいわば,〈パラダイムの違い〉とも言える。