医療と社会
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研究論文
搬送時間短縮のための救急車両と医療施設の配置計画
鈴木 勉
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2004 年 14 巻 1 号 p. 1_125-1_142

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抄録

 わが国は高齢化の急速な進展に直面しており,安心して健康に暮らせる社会づくりが求められているが,救急医療体制の整備については,残念ながら現在の整備水準は先進国の中で決して高いとは言えない。高齢化に伴い,在宅高齢者の急病のための救急車出場件数はさらに増えることが予想されるため,都市生活のリスク管理上,救急医療水準の高度化は重要な課題である。
 本研究は,救急患者の救命率の向上を目指して,救急車両と医療施設の配置及び救急車の運用方法をモデル化し,救急関連施設の適正配置方策と搬送時間の短縮効果を明らかにすることを目的とする。研究の結果として,以下の結論を得た。
(1)わが国における救急出場件数および搬送人員ともに増加してきており,毎年の伸びはますます顕著になっている。今後の急速な高齢化の進展に伴い,救急業務に対する需要は今後ますます増加するものと推測される。搬送時間の短い救急医療を実現することは,プレホスピタル・ケアの充実とともに,安心できる社会づくりにとって重要な事項であり,ドクターカーシステム等の採用と連動した救急車両と救急病院の配置計画の合理化が有効な方策となり得る。
(2)救急車両や病院の適正配置は,救急搬送システムにおけるドクターカー導入の効果を高めることができることが明らかとなった。理論的検討から,病院数の多い地域ではランデブー方式が有利になることが多く,病院数の少ない地域ではドッキング方式が有利になることが想定された。また,救急車両と病院の最適配置問題を数理計画問題として定式化し,それを解くことにより,特にランデブー方式は通常方式に比べて,救急車両と病院を組合せて配置することによって搬送距離の大幅な短縮を図ることが可能となることがわかった。また,救急病院の数が限られる地域では,病院数の多い地域に比べて,ドッキング方式も同程度に優位になることが明らかとなった。ドクターカーシステムの採用によって搬送距離のおよそ2~3割の短縮が可能である。

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© 2004 公益財団法人 医療科学研究所
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