医療と社会
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研究論文
多変量解析を利用した民間病院の経営指標のベンチマーキング手法
経営要素の抽出と特性に応じた病院類型化
河口 洋行
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2005 年 15 巻 2 号 p. 2_23-2_37

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抄録

 我が国の一般病院は,ベンチマーキングなどの導入による経営改善を行いにくい特性として,第一に病院経営における重要な要因がどのようなものなのかについて包括的な認識が希薄であったという点,第二に医療サービスはその種類や提供形態が様々で,病院を比較するための類型化が困難であった点,第三に多種類の経営指標のどれを優先して改善するべきなのかが客観的に把握できなかった点が挙げられる。このため病院経営の改善はいわば「できるところから」手をつけることとなり,職員の理解が得られなかったり,経営改善の実効性が挙がらなかったりするという問題があった。
 本稿は,このような問題意識に立ち,多変量解析の手法を用いることにより上記の問題を回避したベンチマーキング手法の開発を目的としている。まず,病院経営に関する15の指標を用いた主成分分析を行うことにより,病院経営上の特徴的な経営要素の抽出を行った。その結果,病院経営に重要な5つの要素が確認された。第二に,この5つの要素のうち,短期的には外性的に決定される2つの要素を用いてクラスター分析を行うことにより,病院を5つに類型化した。この類型は,それぞれの病院特性を特徴的に捉えており,ベンチマーキングに有効と考えられる。第三に,病院の経営目標を収支均衡と仮定し,類型毎にどの経営指標が影響が大きいかをロジスティック回帰分析を用いて検証した。これによると,経営指標のうち収支に統計的に有意な影響を及ぼすものは限定されていた。また,類型毎に統計的に有意に影響を及ぼす経営指標は異なっていることが確認された。

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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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