【目的】
地域在住の通所サービス利用高齢者を対象とし,認知機能別の「緑茶」に関与する嗅覚機能の傾向を明らかにする。
【方法】
対象者115名をMini-Mental State Examination-Japaneseをもとに正常群46名,軽度認知機能障害(MCI)群33名,認知機能低下群36名の3群に分類し,カード型嗅覚同定検査(OE),「独自の日常のにおい自覚アンケート」のOEに関する12嗅素の自覚率,抑うつ検査(GDS)をχ2独立性検定,ロジスティック回帰分析,Spearmanの順位相関係数,Kruskal-Wallis検定を用いて比較検討した。
【結果】
認知機能低下群は,正常群,MCI群と比較してOEの総得点,OEの正答率,OEに関する12嗅素の自覚率が有意に低かった。OEの正解数と不正解数の乖離において,認知機能低下群は全項目で不正解数が正解数を上回る結果となり,特に「緑茶」の成分に類似したみかん(リナロール)とバラ(ゲラニオール)についての乖離が大きく,みかんのオッズ比が著しく高かった。またMMSE-Jは,OEの香水(リナロール,ゲラニオール),みかんに僅かな関連性があることが示された。
【結論】
正常群は,加齢にて「緑茶」の香りに関与する嗅覚が低下を示した。MCI群は,認知機能が若干低下しているが正常群と同様であった。正常群は,「緑茶」を用いた嗅覚刺激の試みに今後期待できるが,「緑茶」の香りと認知機能の関連報告が確認できないため,MCI群では手法および効果に関する検証が必要となる。一方認知機能低下群は,「緑茶」の香りに関与する嗅覚の著しい低下を示した。このため,MCI群同様に,嗅覚を刺激する取り組みの効果検証が今後の課題となる。
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