抄録
イギリス,フランス,スイスを中心に,ヨーロッパにおける未承認薬使用制度について調査した。各国規制当局のwebsiteで公開されているガイドライン等の情報を精査し,現地調査として,規制当局担当部門,関係企業,研究者インタビューを行った。ヨーロッパ各国の制度の比較分析,ヨーロッパの制度と日本の輸入監視システムとの比較分析を行い,日本における未承認薬使用制度設計に向けた示唆を得た。
ヨーロッパにおいては,未承認薬使用が例外的措置であることが明確にされていた。各国の制度の共通点として,未承認薬使用は生命の危機状態にある患者に対する最終手段として位置づけられていること,患者個々に使用の可否が判断されること,医師の処方が必須であること,輸入量等に制限があること,有害事象報告が義務付けられていることが挙げられた。一方,日本においては,対象患者,対象薬剤,輸入量等の規定はなく,有害事象報告義務もない。また,患者自身が輸入を行うことができ,医薬品の品質が保証されていないという問題もある。
日本における制度導入に際しては,患者による個人輸入の制限,輸入者資格制による品質保証,医師による重篤有害事象報告の義務化などが必要事項であると考えられた。また,製薬企業に過度に依存せず,治験とは異なる枠組みとして制度設計を行い,新薬開発と患者救済の両立を図ることが肝要と考えられた。