医療と社会
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特集論文
臨床指標とDPCデータ
小林 美亜池田 俊也藤森 研司
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2010 年 20 巻 1 号 p. 5-22

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抄録

良質な医療サービスの提供に向け,医療の質評価の仕組みを構築することが必要になる。一般的に,医療の質保証・改善の取り組みにおいては,診療・ケアの提供状況であるプロセスとその効果であるアウトカムに係る臨床指標を用いた評価が行われる。本稿では,入院診療において臨床指標を多く活用している米国の実態を踏まえ,我が国の臨床指標におけるDPCデータの活用可能性について検討を行った。
米国では,政府機関,様々な非営利組織や民間保険会社が臨床指標による医療の質評価を行い,その結果を医療機関や医療者にフィードバックしている。そのうち,一般公開が行われているものある。さらに,医療の質評価を報酬に結びつける制度も導入されている。しかし,これらが質保証・向上に貢献する一方で,一般公開や報酬の影響により,好成績をあげるために患者選別や不適切な診療行為等を招くことも指摘されている。
我が国では,DPCデータの導入によって,標準的な様式で診療情報が把握できるようになった。しかし,現在のDPCデータでは,臨床指標の算出にあたり,適正な評価に向けて必要となる診療情報を十分に得ることができない限界がある。したがって,DPCデータから,課題や改善すべき領域をトリガーできる指標を抽出し,他のデータソースと有効に連動することで,臨床指標を抽出し,その結果に基づき,医療の標準化や質の向上に取り組める体制の整備を図ることが必要と考える。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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