医療と社会
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特集:健康格差の社会経済的要因
健康格差の実証研究
方法論的課題と展望
橋本 英樹
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2012 年 22 巻 1 号 p. 5-17

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抄録

社会格差による健康格差の存在について,社会的・政治的・学術的関心が高まっている。本稿では社会的健康格差をテーマとする実証研究について,現状における方法論的・理論的課題を指摘するとともに,その解決に向けた方策を提示することを目的とする。格差が存在すること自体はすでに事実として受け止められる一方,なぜ社会経済的要因によって健康格差が生じるのかについて,メカニズムの解明は憶測の域を出ていない。その理由として社会的地位の測定と,その理論的裏づけが研究領域間で十分合意形成されていないことをまず指摘する。社会疫学などでは社会階層の代理変数として所得や最終学歴を用いるが,経済学では賃金率や情報・能力を表現するパラメーターとしてモデル化されている。次に通常の疾病疫学と異なり,未測定要因によるmisspecificationや,淘汰による選択バイアスの問題が深刻であり,それを克服する必要があることを指摘する。そのためにはパネルデータの活用に加え,幼少期からの包括的パネル調査が必要なことを主張する。最後に,社会格差による健康格差の実証研究を進めるうえで,データ構築や人材育成の問題に加え,わが国で欠落している「科学的実証に基づく政策立案・評価」の文化を構築することが先決問題となっていることを指摘する。

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© 2012 公益財団法人 医療科学研究所
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