抄録
本研究は，医療機関における責任センター別原価計算に基づいた予算管理の内部要因・課題を考察することを目的に，2013年に６法人を対象としたインタビュー調査として実施された。
責任センター別原価計算をもとにした予算管理について，責任センター別管理を志向する病院では，原価計算は基本的に毎月なされ，各責任センターが管理可能範囲を意識させるフォームをもって開示されていた。予算編成では，収益予算は実現可能性の高い患者数と診療単価の積算となっており，費用予算は変動費部分は収益比率で構成されている。予算統制では，収益における患者数に注視したマネジメントが行われていた。
こうした予算管理では，組織の規模に応じて経営トップ層と現場管理者との間で責任主体に対応して調整が施されたと考えることができ，大型事業においても現場管理者からのボトムアップでの立案が行われて，経営トップ層が投資可能な範囲でコミュニケーションを取りながら執行することで予算を通じたマネジメントに寄与していたことが明らかになった。
