医療と社会
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特集:医療ビッグデータをめぐる現状と課題
大規模医療データのGIS分析:その現状と課題
石川 ベンジャミン光一
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2016 年 26 巻 1 号 p. 61-72

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抄録

病院情報システムの普及に伴って診療に関わる記録が電子化され,医療機関の壁を超えて集積されるようになった結果,我が国でも大規模な医療情報データベースの整備が急速に進みつつある。また大規模医療データについては,臨床疫学的な視点からの医療の学問的・技術的側面に関わる分析だけでなく,社会サービスとしての医療の費用・効率や持続可能性についての観点からも分析が行われるようになってきている。中でも厚生労働省が実施する「DPC導入の影響評価に関する調査」では,医療機関が作成するデータセットに入院治療を受けた患者の住所地が7桁郵便番号として記録され,また調査の結果報告において医療機関の実名入りの傷病別症例数・入院日数などが公表されることから,地理情報システム(Geographical Information System,以下GIS)を利用した診療圏の分析や,社会経済学的な属性を活用した分析への注目が集まっている。本稿では,GISが取り扱うデータの形式や,住所から緯度経度による地理データへの変換,GISを用いた地理情報の分析手法について説明すると共に,具体的な分析事例を示すことでGIS分析の現状についての紹介を試みる。また,GISを利用した研究を進めていく上で直面する課題から主なものを取り上げ,今後に向けた展望について記す。

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© 2016 公益財団法人 医療科学研究所
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