医療と社会
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〈特集〉子どもをめぐる諸課題を考える―少子化問題を中心に―
少子化問題を考える
少子化の人口学的メカニズムを踏まえつつ
阿藤 誠
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2017 年 27 巻 1 号 p. 5-20

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抄録

本稿は日本の少子化の動向・人口学的要因,社会経済的・文化的背景,政策対応を,国際比較を踏まえて概観したものである。70年代以降少子化状況にある先進諸国は緩少子化国と超少子化国に二分されるが,日本は南欧諸国・ドイツ語圏諸国などと並んで後者に属する。人口学的には,少子化は出生の高年齢への先送りによって起こっているが,日本など超少子化国は20代の先送りが著しく30代のキャッチアップが乏しい。そのため世代別の平均生涯出生児数はすでに1.5人以下に低下している。日本では結婚の高年齢への先送りにより未婚化・晩婚化・非婚化が進行する一方,緩少子化国と違い同棲・婚外子がほとんど拡がらなかった。その結果,結婚の変化が少子化の直接的要因となった。結婚したカップルの出生児数の減少は比較的最近のことである。少子化の背景としては,先進国に共通する①豊かな社会の到来と子育て負担の増大と②女性の社会進出(高学歴化・雇用労働力化),日本で注目される③非正規雇用の若者の増大,超少子化国に共通する④伝統的家族観・ジェンダー観について議論した。最後に,少子化への政策対応に関する基本的スタンスを明らかにするとともに,①子育ての経済的支援,②仕事と子育ての両立支援,③非正規雇用問題への対応,④伝統的家族観・ジェンダー観からの脱却について,政策の現状を要約し,国際比較の観点からの評価を試みた。

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© 2017 公益財団法人 医療科学研究所
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