医療と社会
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研究論文
がん相談支援センターの相談記録データへのテキストマイニングを用いたパターンと傾向の分析
三苫 美和 東 ますみ石垣 恭子福島 美幸谷水 正人西村 治彦
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2021 年 30 巻 4 号 p. 459-478

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抄録

本研究の目的は,がん相談支援センターに蓄積される相談記録に対する体系的なデータ活用への第1段階の取り組みとして,相談記録の1年分(9,451件)を対象に,相談内容項目と相談記録文に対して共起性分析とテキストマイニングの手法を用いて相談内容を構造化し,そのパターンと傾向を明らかにすることである。その結果,まず,相談内容項目の組み合わせパターンを可視化できた。次に,各項目の相談記録文における共起関係のネットワーク図に基づいて,「受診方法・入院」では,がんの疑いやがんの診断後にがんの専門病院を受診したいこと,「症状・副作用・後遺症への対応」では,薬物療法に伴う副作用を医師に相談したいという状況が読み取れた。また,「医療費・生活費」では,高額医療費の払い戻しの仕組み,「がんの検査」では,検査の申し込み方法や料金,検査前の水分摂取や定期内服薬の相談が確認できた。さらに,相談内容項目が複数に亘る場合には,これらの各項目における相談内容のパターンを組み合わせて対処することができると考える。本手法によって相談記録を構造化した結果は,相談支援従事者にとって相談内容の文脈を共有し,相談対応に必要な知識の強化に活用できることから,膨大な相談記録に対するアプローチ手法としての有用性が示唆された。

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© 2021 公益財団法人 医療科学研究所
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