医療と社会
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研究ノート
「健康経営」概念の多様性と既存評価尺度との整合性に関する考察
中芝 健太 橋本 英樹古井 祐司
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2021 年 31 巻 1 号 p. 155-164

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抄録

企業活動において従業員の健康への投資のあり方を模索する「健康経営」が注目を集めている。しかし,その目的や意義について健康経営の取り組みを行うステークホルダー間で共通見解・統一的定義が存在するわけではない。本研究では,健康経営という概念の背景として,産業保健における健康管理の発展,企業に対する投資の環境整備,保険者による医療費適正化という少なくとも三つの流れがあることを確認したうえで,「健康経営」を巡り行政・民間それぞれのステークホルダーが目指すものと,「健康経営」活動を評価するため提案された既存尺度の測定項目との整合性について考察した。主要な政策的ステークホルダーとして,経済産業省ヘルスケア産業課,厚生労働省保険局ならびに厚生労働省労働基準局を挙げ,それぞれの政策意図と「健康経営」の捉え方を既存資料から解釈した。また,「健康経営」の取り組みを実際に展開する民間・準民間ステークホルダーを政策的ステークホルダーに対応する形で整理し,それぞれの取り組みの性質や目的の違いを描出した。そのうえで,健康経営に関わる主要な評価指標として三つの尺度を取り上げ,測定される項目の異同や解釈について比較検討した。以上の作業を通じて,「健康経営」のコンセプトを意義ある実践につなげるためには,実施主体の目指す価値に応じて「健康経営」の目的を明示的に設定したうえで,評価尺度や評価項目を戦略的に選択・測定・解釈することが必要であると考えられた。

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© 2021 公益財団法人 医療科学研究所
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