医療と社会
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特集 患者自己負担の在り方をめぐる諸問題
患者自己負担をめぐる政策過程
合意形成の効率化
印南 一路
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2021 年 31 巻 1 号 p. 71-85

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抄録

2020年末,新型コロナ禍の合間を縫って,長年議論されてきた後期高齢者の2割自己負担導入,紹介状なしの大病院外来受診時定額負担の問題が決着した。定率であれ定額であれ,患者自己負担の導入は,国民の負担増加を伴い,かつ医療団体の強い反対が予想される実現困難な改革のはずである。にも拘わらず,これらの課題が決着できた理由は何か。

この疑問に答えるため,官邸機能強化に関する制度的考察,合意形成のガバナンス(意思決定規律)に関するモデル構築,上記2事例についての事例過程追跡の3つを行った。

その結果,(1)1994年以来の政治制度改革,省庁と会議体の再編,内閣機能の漸進的強化により,重要政策会議等の閣議決定を用いた官邸主導による合意形成が効率化されたこと,(2)どのような合意形成手段が使われるかは,課題の政治性のレベルに依存するが,課題の政治性のレベルは課題固有の特徴と一致し,特に選挙への影響予想と関係団体の抵抗の強さに依存すること等が示された。

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