医療と社会
Online ISSN : 1883-4477
Print ISSN : 0916-9202
ISSN-L : 0916-9202
新型コロナウイルス感染症:対策の課題と今後の展望
埼玉県から見たCOVID-19対策
大野 元裕
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 32 巻 1 号 p. 9-20

詳細
抄録

ワクチンがない,知見がない中,医療資源の乏しい埼玉県のCOVID-19対策は,狭義の意味での医療行為・体制にとどまらず,政府や市町村との関係,県民並びに事業者の社会・経済活動,広報と県民の理解,法や規則との整合性や矛盾といった幅広い課題に対する戦略的・戦術的対処を必要とした。

中でも,知見が集積される中で,陽性者の多寡に関わらず,戦略目標を高齢者福祉施設での感染防止等,脆弱な層への対処に転換させ,県庁ワンチームでこの戦略目標実現の戦術構築に資源を集中させた。その際には,県専門家会合の助言により医療機関への負担を優先的な基準とした。また,経済・社会活動と感染防止対策のバランスが常に課題となったが,早い時期に産官学金労の会議体を設け,幾度かに亘り実践的な提言を取りまとめ実行した。

ワクチン接種の拡大や抗体カクテル療法の効果は明白で,積極的に支援・対応に努めてきたが,新たな変異株や感染拡大に準備するための対応を継続的に進める必要がある。またその際には,首都圏知事間で連携を図ってきた。

政府や市町村との意思疎通には反省点はあるものの,ワクチン接種では市町村に一定の支援を行った。政府の資源配分には課題が残る一方で,公的病院における優先入院や療養施設への入所勧告など法律改正が待たれる。

著者関連情報
© 2022 公益財団法人 医療科学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top