日本では約7割の人が人生の最期を住み慣れた自宅で過ごしたいと希望しているが,実際に自宅で最期を迎える人は2割に満たない。多くは最期まで病院で治療を受けながら,病院で亡くなっている。これは,患者のQOL(QOD)および医療資源の適性利用の2つの点で大きな課題である。
人生の最終段階における希望と現実に大きなギャップが生じている要因として,意思決定支援,在宅療養支援体制,そして家族の介護負担(およびそれに対する本人の遠慮)の3つが特に重要である。そしてこの3つの要素は相互に影響し合う。
特に人生の最終段階,どの選択が正解なのかは誰にも分からない。だからこそ,納得のできる選択であることが重要になる。どの選択が本人にとって最適なのか,患者・家族と在宅療養支援チームが病状経過の見通しを共有した上で共に考える「共同意思決定」が基本となる。この際,認知症であっても本人の意向は最大限尊重される。また家族だけに決断の責任を負わせないよう配慮する。
選択された療養方針に従って多職種による在宅療養支援が行われる。最期が近付くと病状は不安定となり,家族や介護専門職は不安を感じることが多い。医療専門職によるエンパワメントが重要になる。
家族の介護への協力は重要だが,特に認知症の場合は家族の関わりがケアを困難にすることもある。家族が適度な距離感を持ってケアに関われる状況を作ることにも留意が必要である。