医療と社会
Online ISSN : 1883-4477
Print ISSN : 0916-9202
ISSN-L : 0916-9202
33 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
〈特集〉虚弱高齢者の終末期ケア
  • 池上 直己
    2023 年 33 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
  • 池崎 澄江
    2023 年 33 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    近年,死因に占める老衰の割合が増加し,特別養護老人ホームの死亡数も増加している。2006年に新設された看取り介護加算は,それ以後の特養の看取りを推進するものとなり,現在約8割の施設が看取りに対応するようになった。加算の内容を見ると,2015年からは多職種連携による質の改善への取り組みを求め,2021年からは死亡前41日からの算定が認められるなど,早期から意思確認を行って方針を定めていくことも含めた継続的な取り組みを評価する体制へ変わっていった。このように,改定の度に要件として追加された内容が契機となり,看取り介護実践の充実に繋がった。

    特養で看取るまでの経過では,入所時からの丁寧な説明と,常に本人・家族の意向を尊重したケアの提供を行うことを方針としている。看取り期に入る手前の【不安定・低下期】には,介護職の観察,看護職のアセスメント,配置医師との連携が重要である。施設看取りの分かれ道となる入院の判断では,家族の意思決定への負担に配慮したうえで,あくまで家族(本人)が決定主体となるよう支援を行う。

    特養の看取りへの遺族評価は高く,その理由としては本人・家族の意向を尊重する意思決定支援と個別性の高い介護によるものである。

  • 大河内 二郎, 東 憲太郎
    2023 年 33 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    介護保険法により介護老人保健施設(以下,老健施設)の対象者は,「要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り,居宅における生活を営むための支援を必要とする者」である。従って,老健施設は入所し続ける施設ではなく,居宅での生活を維持しつつ,リハビリテーション等の目的で施設利用をする高齢者に対して総合的なサービスを多職種で行っているという特徴がある。老健施設を繰り返し利用している中で,人生の最期を老健施設で過ごすことになる高齢者が増えている。2017年には約7割の老健施設が看取り機能を有していた。老健施設における看取りの満足度調査では約9割の利用者の家族が看取り後に満足と答えており,その施設側要因としては,多職種での利用者への説明と,より早期の看取りへの説明等が要因として挙げられた。

    また老健施設は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーション等のサービスを提供していることから,在宅高齢者がより軽度な障害を負った時点から以後の生活を支えることができる。つまり老健施設では,単なる終末期の看取りだけではなく,対象者が元気なうちから残りの人生をどこで,どのように生きるのかということも含めて支援が可能な側面がある。従って単なる終末期医療 “End of Life care”ではなく,“Life Care”と考えることで,よりそれぞれの利用者の個別性に立ったマネジメントが可能になると考えられる。

  • 佐々木 淳
    2023 年 33 巻 1 号 p. 37-52
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    日本では約7割の人が人生の最期を住み慣れた自宅で過ごしたいと希望しているが,実際に自宅で最期を迎える人は2割に満たない。多くは最期まで病院で治療を受けながら,病院で亡くなっている。これは,患者のQOL(QOD)および医療資源の適性利用の2つの点で大きな課題である。

    人生の最終段階における希望と現実に大きなギャップが生じている要因として,意思決定支援,在宅療養支援体制,そして家族の介護負担(およびそれに対する本人の遠慮)の3つが特に重要である。そしてこの3つの要素は相互に影響し合う。

    特に人生の最終段階,どの選択が正解なのかは誰にも分からない。だからこそ,納得のできる選択であることが重要になる。どの選択が本人にとって最適なのか,患者・家族と在宅療養支援チームが病状経過の見通しを共有した上で共に考える「共同意思決定」が基本となる。この際,認知症であっても本人の意向は最大限尊重される。また家族だけに決断の責任を負わせないよう配慮する。

    選択された療養方針に従って多職種による在宅療養支援が行われる。最期が近付くと病状は不安定となり,家族や介護専門職は不安を感じることが多い。医療専門職によるエンパワメントが重要になる。

    家族の介護への協力は重要だが,特に認知症の場合は家族の関わりがケアを困難にすることもある。家族が適度な距離感を持ってケアに関われる状況を作ることにも留意が必要である。

  • 伊藤 香
    2023 年 33 巻 1 号 p. 53-66
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会となった日本の救急・集中治療の現場には,多くの人生の最終段階にある高齢者が搬送されてくる。しかしながら,その多くがAdvance Care Planning(ACP)を行っておらず,救急・集中治療医は“緊急ACP”を行う必要がある。米国では,集中治療医療従事者に対するのためのコミュニケーションスキルトレーニングがより良いACPを可能にするというエビデンスが数多く存在している。筆者らは,そのトレーニング法の一つとして知られるVital Talkを日本に文化適応させた日本版を開発した。本稿では,バイタルトーク日本版が提唱するコミュニケーションスキルを例示し,救急・集中治療に携わる医療従事者が,虚弱高齢者を含めた人生の最終段階にある患者とその家族に「悪いニュース」を上手に伝え,患者の価値観を尊重した“緊急ACP”を行うための手法を解説する。

  • 水野 裕元
    2023 年 33 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    今後,高齢化社会がさらに加速し,多死社会がやってくる。医療はさらに高度化し,診断技術,治療技術,治療機器,治療薬なども発達し,治療可能な疾患・病態が増え,治療適応の範囲も広がってくる。患者さんおよびその家族の要望は,「できることは何でもやってほしい」から「もうそこまでしなくて良い」まで様々であるが,実施可能な治療・介入方法が存在する中で,どこまでの介入で折り合いをつけるのが最良かを判断するのは難しく,特に「死」が絡んでくる場合には非常に悩ましい。

    医療が進化し寿命が延びるにつれ,認知症または認知機能の低下している方も徐々に増加してくるのは明らかであり,その方々の治療から看取りまでどのような対応が選択されるべきで,何が最良の対応なのであろうか。「病院」はその機能から,高度急性期,急性期,回復期(回復期リハビリテーション,地域包括ケア),慢性期・療養型,に分かれている。そして外来診療の中には,在宅訪問診療がある。さらに病院とは別に施設として,特別養護老人ホーム,介護老人保健施設,サービス付き高齢者住宅,老人ホーム,グループホームなどがある。それぞれの所でそれぞれの機能に応じた様々な対応がなされており,それぞれ判断に悩まれ,工夫をされていると思う。死亡診断の際の死因についても,「病死」なのか「自然死」なのか「老衰死」なのか,判断に迷われていると思う。ここでは,上述の回復期に当たる病院である地域包括ケア病棟での取り組みとして,当院での認知症患者の「看取り」の現状を報告する。判断材料の一助となれば幸いである。

  • 全ての重い病を持つ患者とその家族を対象として
    木澤 義之
    2023 年 33 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    わが国の緩和ケアは,がんを中心に発展してきたが,緩和ケアの対象は全ての重い病であり,がん以外の疾患に対する緩和ケアの体制整備が急務である。特に高齢者における緩和ケアを考える上で重要なキーワードが,フレイル(frailty),進行性疾患の多疾患併存(advanced multimorbidity),不確実性(uncertainty)である。このようなフレイルで多疾患併存の状態の患者に緩和ケアを実践するには,高齢者総合評価に加えて,詳細な緩和ケアのアセスメントを行い,前記した不確実性(uncertainty)があることを前提に予防的に関わる必要がある。

  • 前田 正一
    2023 年 33 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    厚生労働省は,平成4年度より概ね5年毎に一般国民等を対象として終末期医療に関する調査を実施してきた。これまでに合計7回の調査が行われている。近年の調査結果を見ると,一般国民の中には,認知症を患った場合,介護施設や自宅など,医療機関以外の場所を最期の場所として希望する者も多いことが推察される。

    しかし,医療機関以外の場所には医師が常駐していないことから,医師による死亡診断が迅速に行えないことがあるなどの事情や,下記のように規定する医師法20条に係る誤解により,患者の中には,人生の最期の段階で医療機関への入院を余儀なくされ,そこが最期の場所になる者がいるとの報告がなされてきた。

    そこで,本稿では,上記の厚生労働省による調査結果を対象として,人生の最期の場所に係る一般国民の意識を確認した上で,(死亡診断・)死亡診断書について規定する医師法20条の解釈及び厚生労働省による関連通知について解説する。

    【医師法20条】

    医師は,自ら診察しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方せんを交付し,自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し,又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し,診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については,この限りでない。

  • 認知症末期の本人の意向を尊重した意思決定支援モデルの探索的研究
    2023 年 33 巻 1 号 p. 97-135
    発行日: 2023/05/29
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
feedback
Top