2024 年 34 巻 1 号 p. 11-26
コロナ禍で孤独や社会的孤立の問題が顕在化・深刻化している。本稿では,国内外における孤独感と社会的孤立の定義,分類,測定方法,および理論的アプローチを整理した。また,ミクロとマクロという2つの視点から孤独感と社会的孤立に関連する要因を概観した。ミクロレベルでは,人口統計学的要因,社会的要因および個人的要因から,マクロレベルでは,人口構造の変化や経済格差の拡大,COVID-19パンデミックといった社会環境の変化および文化的要因から考察した。これまでの研究について,孤独感と社会的孤立に関する研究の課題として,定義や測定方法が確立されていないこと,主に高齢者を中心に行われてきたこと,横断的な研究に偏っていることなどが挙げられる。また,コロナが終息した後も,今まで顕在化になった問題は再び目に見えにくくなる可能性があるため,孤独感と社会的孤立に関する検討は,社会が対応すべき重要な課題として残っている。今後の研究では,これらの課題に対処し,より包括的で広範なアプローチを取ることが求められる。