医療と社会
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〈特集〉孤独感と社会的孤立 その現状と対応
成人期,高齢期における社会的孤立,孤独感の分布と規定要因:文献レビュー
村山 洋史 須田 拓実中本 五鈴
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2024 年 34 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

本研究は,成人期および高齢期における社会的孤立と孤独感に関する包括的なレビューを行い,その分布,規定要因(関連要因,誘発要因)について概観する。社会的孤立,孤独感は,社会構造の変化,テクノロジーの進展,個人の志向の変化,新型コロナウイルス感染症流行の影響下での生活様式の変化が大きく影響し,近年深刻化し,対応が急がれている。社会的孤立と孤独感は関連するが異なる概念であり,社会的孤立は客観的な社会的ネットワークの欠如を,孤独感は主観的な交流の欠如という感情を指す。社会的孤立は主に社会的ネットワークの測定によって定義され,孤独感は心理尺度によって測定されることが多く,両者とも多岐に亘る要因が関連している。また,孤立,孤独に陥る契機は,転居や近しい者の喪失など誰しも経験するライフイベントや,戦争や紛争,自然災害などの個人ではコントロールできない要因によって引き起こされる。日本においては,個人主義の進展や,気楽なつながりを求める傾向が増加しており,これらの社会文化的変化が社会的孤立や孤独感に影響を与えている可能性がある。また,コロナ禍はこれらの問題を一層顕在化させ,新たな社会的孤立や孤独感の形態を生み出していた。健康やウェルビーイングを保つためには,孤立や孤独を予防するとともに,どのような状況の人でも,たとえ孤立,孤独に陥ったとしても,必要時に社会的なつながりや支援を得られる場づくりや仕組みづくりが重要である。

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