論文ID: 2025.006
近年,支援サービス体制の在り方にサービス利用者の声を反映させる動きが広がっている。援助希求行動を促進する環境について知見はあるものの,困っているにもかかわらず助けを求めていない人(非援助希求行動)のニーズについて調べた研究はない。本研究は,非援助希求行動状態にある若者が支援サービス体制に対して望む環境に関して検証した。
東京都狛江市による18~39歳の住民への調査のオープンデータより206名分の回答を分析対象とした。悩み事と援助希求行動の有無より非困難群(50名),援助希求行動群(91名),非援助希求行動群(64名)に分類し,社会人口統計学的要因や生活満足度をカイ二乗検定やt検定により比較した。またロジスティック回帰分析により各群における援助を求めやすい対象や手段の回答傾向を検証した。
非援助希求行動群の2~3人に1人から,匿名性が高いこと,相談相手が相談内容を受け入れてくれやすい特徴を有すること,相談機関へアクセスしやすいことなどが援助を求めやすい対象や手段として報告された。しかし他群よりもこれらの回答割合が低いことに加え,生活満足度が低く,経済的な悩みが多く報告された。非援助希求行動群の大半は,相談先がわからないなどの理由で援助希求に至っていないことが観察された。
非援助希求行動状態にある若者は,自身のニーズを表出できない状況にあることが示唆された。SNSなどを通じた遠隔相談体制の拡充や,経済的困難やヘルスリテラシーの差による不均衡に配慮した支援体制作りをしていくことは,非援助希求行動状態にある若者が相談しやすい環境作りのために重要かもしれない。