医療と社会
Online ISSN : 1883-4477
Print ISSN : 0916-9202
ISSN-L : 0916-9202
医療提供体制と保険者機能
松原 由美
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 12 巻 1 号 p. 27-35

詳細
抄録

医療の質の問題,医療費適正化など,医療制度の課題は多様であるが,その多くは医療提供体制の課題に収斂すると言えよう。この意味で,医療提供体制の問題は医療制度の根幹を左右し,極めて重要である。そこで本稿では,医療制度改革の一つの手段として挙げられている保険者機能の強化と,医療提供体制の課題との関係について考察した。
そもそも本来の保険者機能とは,財政収支を均衡させ,ゴーイングコンサーンとして被保険者に保険を安定的かつ継続的に提供する機能であるが,公的保険にあっては,その社会的使命の度合いによって,これら本来的機能が必ずしも個々の保険者に当然には付与されない。そこで「誰に」「どのような機能」を付与するのか, その時代に合った最も合理的な組合せを論ずる必要がある。それを論ずるのが保険者機能論と言えよう。
本稿では医療提供体制の課題のうち,(i)医療費適正化,(ii)医療の質の向上,(iii)情報公開について,その具体策として提案されているレセプトー次審査,医療の標準化,医療機関の評価との関連について考察し,一部にはその効果が期待できるものがあるものの,抜本改革につながるような効果は難しいと考えられることを示した。
ただし保険者機能は,医療提供体制も含めた医療保険制度の改革にあたり,重要なテーマであるので, これを意義あるものにするためには, 保険者機能についての実証的研究が急務であると考えられる。

著者関連情報
© 医療科学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top