2002 年 12 巻 1 号 p. 17-25
医療改革については経済財政諮問会議,総合規制改革会議,財務省,厚生労働省,日本医師会,健康保険組合連合会など多くのプレーヤーがそれぞれの意見を主張し,混沌としているのが現状である。医療提供体制の改革は必須といえるが,その方法論については多くの論議がある。
考える上でのポイントは財の特徴でArrowが指摘した,医療ニーズの普遍性,不確実性,情報の非対称性に加え,医療が私的財,価値財,手段財,Non-retradable goodsであることだ。資源配分の効率化には生産効率の改善と消費効率の改善という2つの要因がある。後者について市場は主に価格メカニズムを利用する。価格メカニズムが医療サービスの消費効率化をもたらさないために,市場は後者の改善に無力である。ゆえに市場は資源配分の効率を改善しない。医療提供体制の改革には,効率に両者があることを認識すべきである。
一方,生産効率の改善には市場を使う方法が有力である。しかしながら,組織という手段も代替手段として存在するので,どこまでを市場で行い,どこまでを組織で行うかの線引きが医療においても必要である。