医療と社会
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わが国の医療提供体制の改革と病院経営
尾形 裕也
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2002 年 12 巻 1 号 p. 3-15

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抄録

わが国の医療制度改革については,1997年以来5年越しの課題であり,さまざまな議論が行われてきたが,2000年に続いて,2002年においても一定の改革が実施されることになっている。その中で,さらには今後を展望すると,医療提供体制の改革は最も重要なテーマのひとつであり,病院経営にも大きな影響を与えるものと考えられる。わが国の医療提供体制の現状を諸外国と国際比較してみると,相対的に病床数等の「資本」が豊富なのに対し,医療専門スタッフによる「労働」投入が手薄な状況にあるといえる。今回の厚生労働省の改革試案において,医療提供体制の改革としては,(1)患者の選択の尊重と情報提供,(2)質の高い効率的な医療提供体制,(3)国民の安心のための基盤づくりの3つが基本的な事項として示されている。そして,医療提供体制の効率化の結果,近い将来における病床数の大幅な縮減ということも予測されている。
今後の病院経営のあり方を展望すると,全般的な病床数の縮減の中で,「急性期特定病院」的な方向と,「複合体」的な方向の2つが基本的な方向として考えられる。こうした組織の戦略的なポジショニングを決定するにあたっては「リーダーシップ」の役割がとりわけ重要である。「特定療養費」の拡大等,本来の「経営者機能」の発揮がますます求められるようになっていく中で,「消費者」である患者のニーズを的確に把握し,これに対応していくという経営姿勢を確立することが基本であろう。

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